4ヶ月ぶりの集合。どこにいく?
数ヶ月〜半年に1回くらいの頻度で会う、学生時代の友人。3人の目論見はもっぱら「明るい時間から飲酒すること」。飲むペースが合い(つまりまぁまぁ飲む)、飲み物や食事の好みも合う(エスニック系も歓迎)。喋りたい時に喋り、黙りたい時に黙るそんな自由な空気が何よりも居心地がいい。
0歳児含む3人の育児中の子のスケジュールに合わせ、午前9〜10時に集まり、夕方のお迎えの時間で解散するという流れが最近の鉄板だ。仕事終わりに集合し、早朝までカラオケしていた頃の私たちからずいぶんと大人になったなと思う。
前回は下北沢に集合し、ランチ後にデザートワインバーに行ったが、今回はどうするか。
吉祥寺のハモニカ横丁で飲み歩きの案も出たが、散歩することが命を危険に晒す行為なほどホットな天気なので、あれこれ策を考え「どうせ汗をかくなら、積極的に汗をかきにいかないか?」と温浴施設を提案したところすんなり通った。2人ともノリがいいというか適当というか。そんなバイブスだ。
10時JR川崎駅集合。朝日湯源泉ゆいるへ。
そんなわけで、私たちは川崎駅に集合し、路線バスに揺られること10分。「朝日湯源泉ゆいる」に到着した。2021年頃にできた施設で、とても清潔感があり、こじんまりしているが、必要なものが3階建の箱にコンパクトに納まっている感じだ。1階は受付とお食事処、2階が大浴場、3階がごろ寝ができる休憩スペースやマッサージやよもぎ蒸しがあった。
いざ入館。お風呂の雰囲気は?
11時前に入館すると、常連さんがすでにまぁまぁいて、勝手知ったるやという感じで風呂、サウナ、洗い場を迷いなく使いこなしていた。だが、常連さんが多い空気にありがちな新参者に対する疎外感が全くない。おそらくみんなが「黙浴」を守っていたからだろう。
知らない銭湯やサウナに行き、猿山を見物するかのごとく、常連さんらしき人同士の会話を盗み聞き、勢力図的なものを想像するのもそれはそれで楽しみである。でもヒソヒソ話をしていたり、自分以外の人たち同士で挨拶が活発に行われているとひとりぽっちの気分になる。そういう居心地の悪さは、「ゆいる」にはなかった。
マナーを守ってお互い気持ち良く過ごしましょう協定を暗黙で結んでいるかのようだった。(風呂を出る直前に、迷惑かけてやりたい欲ぷんぷん丸がスタッフと揉めてたけどそれくらいだった。)
お風呂は、ぬるゆとあつゆ、超ぬるい高炭酸泉と水風呂。サウナは中温と高温の2種類。そして、屋内だが外の空気が入り込む外気浴スペース。サウナに開眼して初めての夏を迎える身としては、真夏の炎天下での外気浴はこれっぽっちも想像できなかったので、屋根付きという条件はとても安心した。
超ぬるい高炭酸泉と書いたが、全くそそらない字面になってしまった。即座に訂正しよう。なぜならば、3人満場一致でお気に入りの魅力的なものだったから。
正式には「琥珀不感強炭酸泉」といい、温度は30度くらい。足を付けた瞬間「え?冷たい?これお風呂?」と不安になるのだが、しばらく入っていると、全体に冷たい感覚がありつつ、ぽかぁ〜じわぁ〜と体のどこかが変化しているのも感じられる。気がつくと大粒の炭酸の粒が勢い良く体についている。いろんな不思議体験がめまぐるしくやってきた。壁にかけてある炭酸泉の説明書きには、「5分入浴すると血流が4倍になる」とあった。よくわかんないけど、4倍ってなんかすごい。のぼせることなくずっと入っていられる健康系お風呂だった。
「アウフグース」。それはもう一つの衝撃体験。
アウフグースとは、大きなバスタオルをブンブン振り回し、熱波を起こすあれだ。どうやらドイツ発祥のサウナ入浴法らしい。「ゆいる」では一時間に一度の間隔で、アウフグースが行われる。
アウフグースがはじまるとスタッフがアナウンスをすると、すぅ〜〜と人々が高温サウナに吸い込まれていく。そして、ばみりがあるかのように、見えない何かに沿ってきれいに上の段と下の段に等間隔で座る。
準備が整うと、スタッフさんが入室し挨拶をはじめる。「今日はご来店いただき誠にありがとう〜」と始まり、自己紹介が続く。某Dランドのアトラクションに乗り込んだ時の感じだ。
「アウフグースが初めての方はいますか?」と聞かれ、挙手をしたのは友人と私だけだった。「特に初心者は無理は禁物です」と数回念押しがあり、非常に不安を煽られた。某FJQハイランドのアトラクション出発前のように、体の奥で、緊張がピリピリヒヤリと走った。周りを見れば、すでに皆が精神統一に入ったような精悍な顔つきになっていた。怖い…つい恐怖で目をつぶりそうになるのだが、「アウフグースの熱波は疲れ目にもいいので、目をガン開きにするように」とオススメされたばかりなので、初っ端からつぶるわけにもいかない。いろんな感情がせめぎ合っているうちに、ロウリュによってじわじわ室内の温度があがる。「ふぅ」と深呼吸をしたのも束の間。ラグビーボールを2まわり大きくしたくらいスピーカーから低音を利かせたアレンジのディズニーメドレーが爆音で流れてくる。ホップステップジャンプという具合に、次の瞬間に、煽ったバスタオルからブン!と強烈な熱波がやってきた。
「ぶわぁお!」一瞬頭が真っ白になった。
パッと隣の友人に目をやると、思わず自分の体を抱き抱え、怯えた目をしていた。
大丈夫。体ちぎれてないよ!と目配せをし、タオルを振り回すスタッフさんに視線を戻す。
さぁ次の風かかってこいや!という気概でじっと見ていると、適当にタオルを振り回しているのではなく、順番に一人一人に向き合い、じっと目を合わせて風を送ってくれていることがわかった。自分のために、こんな過酷な環境で風を送ってくれるなんて!という感動し、アウフグースとは風を送る側と受ける側の共同作業なのだとハッとする。
そんなアウフグースのチームプレーを味わいつつ、音楽に身を委ねていると、暑くて苦しいという感情が紛れていた。あっという間に終盤になり、最後にその日で一番鋭い熱波を背中に受け、「かまいたち通った?」と最後の最後でパニックに。
修行を乗り越えた皆々から自然と湧き上がる拍手。これだけの一体感があるのは、ジャングルクルーズでワニや先住民から無事に逃げられた時くらいだろう。
終わったという安心感と、達成感。そこには大エンターテイメントがあったのだった。
もう一つの目的。それは「乾杯」
トータル2時間くらいだろうか。思い思いお風呂とサウナを堪能したところで、空腹の限界を迎え、食事処に向かうことにした。
ちょうど、その頃外部の熱波師(アウフグースの風を起こす人)の方が来るイベントがあるらしく、それを目当てにしたお客様が更衣室でワイワイやっていた。「お久しぶりです!」と声を掛け合い顔見知りのようだった。アウフグースはこうやって人間関係を育んだりするものなのかとか、共通の推し熱波師を追いかけているのかなとか思った。
食堂ではアルコールで喉の渇きを潤し、唐揚げ定食を頬張る。うん。間違いない。あれこれ楽しく近況話に花を咲かせたところで、解散の時間になった。「食堂の店員さんが感じが良かったね〜」と言いながら帰り支度をする。
私以外の2人は今までサウナを楽しんだことはなかったようだが、
「ハマる人の気持ちがわかった気がする」
「今日1日で熱さに強くなった気がする」と銘々何か確かなものを感じていた。一緒に来れて良かった。
私はここ2ヶ月半、湯活・サ活をお休みしていた。「酒さ(しゅさ、と読む)」という顔が赤くなる皮膚の症状が悪化しており、体温変化が激しいものを避けていたのだ。
でも久しぶりに来ると、やっぱり気持ちはいいし、代謝もあがって翌日の肌つやが良い。(アウフグースの薬草や温泉も効いたのだろう)
無理しない程度で、この楽しみを取り戻していこうかなと思った。
気の置けない仲間とのおすすめの遊びは、ピクニックに続き、温泉サウナ施設ということを発見した夏の1日だった。
▷最後までお読みいただきありがとうございます。ぜひポチッとお願いします!
にほんブログ村