「程よい」はオトナ週末旅のキーワード。群馬県四万温泉へ

たのしむ

「程よい」とは

先日、群馬の四万温泉(しま)へ一泊旅行をしてきた。群馬の温泉地といえば、草津や伊香保が真っ先に浮かぶだろう。四万は、読み方もちょっと危ういくらい。それほど、わたしにとってはマイナーな存在だった。だがしかし、一泊でこの場所の虜になってしまったのだ。
この街をひとことで言えば、「程よい」だ。
街の静かさ、規模、趣ある古さ、新しさ、都心からの距離など。箱根、熱海は何度も行ったことあるしな…という人は、ぜひ北関東へ足を向けて見ることをおすすめしたい。
以下、最高!ではなく、程よい程よいばかり言って、関係者の方が見て落胆されたら申し訳ない。しかし、「程よい」はわたしの中での最高の褒め言葉であるので、なにとぞご理解いただきたい。

四万温泉とは

群馬県吾妻郡にある温泉地で、昔ながらの趣を残す温泉街で、東京駅から高速バスで約3時間半で到着する。運賃は往復で5,000円ちょっと。
帰りのバスは、17時過ぎに到着と、まだちょっと体力が残っている時間に帰って来れる。アラフォーには、これくらいがちょうどよかったりする。

「四万(よんまん)の病を癒す霊泉」に由来する名前とかで、胃腸病に効く万能な温泉らしい。
ここ最近一番有名なところでいうと、「千と千尋の神隠し」のモデルとなった積善館という旅館。映えが好物な若者もやってくるのだが、そういった輩があっちでもこっちでもスマホを前に笑顔を作っているという場面にははさほど遭遇しない。なぜなら、それ以外にはあんまり人工的な見どころがないからかもしれない。でもこれがわたしにとって、とても良かった。

街の規模が程よい

四万温泉に流れる四万川。この川の上流に奥四万湖(四万ダム)が位置する。その付近から温泉旅館があり、徒歩20分ほど下ると街の中心部に来る。そこから温泉口までも約15分ほどで、端から端まで歩こうとなったら1時間ちょっと。(実際、湖までは結構傾斜のある登り道なので、一気に歩くことはあまりないと思うけれど)
だから、街の概観を把握しやすく、散策しやすい。所々観光スポットがあり、説明の看板が立っているので、迷いにくいし、四万温泉を深く知るきっかけが散らばっている。観光客への気遣いを感じる。

わたしは、中心部から10分ほど登った「温泉グランピング・シマブルー」に宿泊する予定だった。お昼ごはんを終えて、腹ごなしをしながら宿に向かう。チェックイン時間前だったので、荷物だけ置かせてもらい、四万ダムへ向かった。
片道30分くらいだった。お腹もすかせ、汗もかいて、これから温泉に入り、夕飯という流れを迎える最高の準備ができた。
2月の四万ダムは、ほとんど凍っていた。観光用の写真で見るような美しいコバルトブルー一面の湖を望むことは出来なかったが、一部分だけでもその片鱗を覗かせており、息を飲むような美しさを放っていた。

シマブルーの美しさがのぞく冬の四万ダム

飲食店やお土産やが程よい

観光地と言うと、美味しいお店はあるけど、外見だけ美しく食べてみるとそこまで…というお店もちらほらある。お土産やさんも商売魂がギラつきすぎて居心地が良くなかったりするところもある。
でも四万ではそれに出会わなかった。全体的なお店の数が少ないのもあるが、一店、一店丁寧な感じがした。老舗のそばやうなぎなどの日本食やさん、一流の料理人が腕を振るうフレンチ、新しめのベーカリーカフェや薬膳料理のお店など、似たお店がなく、馴れ合ってやっている感じのお店もない。
これが無理に肩肘はらずに過ごせた要因だったのでは、と感じる。

飲泉、無料の公共浴場のワクワクが程よい

30年以上生きてきて、何度も温泉地に行ったことはあるが、「温泉を飲んだ」記憶がほとんどない。しかし四万では何箇所か、飲泉できるスポットがある。
飲んでみるとどんなに舌バカの人でも分かるくらい「まろやか」だった。塩味は感じるような感じないような味のない感じだが、感触が優しかった。歩いているとチョロチョロとお湯が出ている飲泉所が現れ、手でひしゃくの形を作って飲んでみるのも、ちょっと粋な感じがした。

散歩していると現れる飲泉スポット

飲泉のそばには足湯もあったが、それだけではない。なんと無料でお風呂に入れる共同浴場が3箇所あるのだ。洗い場もないし、数人入ればいっぱいになってしまうので、ファストフードならぬ、ファスト温泉といえるのだろうか。
わたしは一番上流に位置する「御夢想(ごむそう)の湯」に浸かった。ちょっと熱めだったので、近くの蛇口から水を足して好みの湯温にする。朝10時台だったからか、他の人はいなくて、一人でゆっくりできた。
そのあと散策途中に「上の湯」にも立ち寄ってみる。ちょうど人がいなかったので、浴室をのぞいてみたが、こちらは「御夢想の湯」より広かった。時間がなかったので見るだけになってしまったが、今度行く時があれば、ここも入浴してみたい。
温泉街の中心に位置する「河原の湯」は、さすがに人の出入りがあった。

行ってみて空いているかどうか。どんなお風呂なのかどうか。中身のわからない宝箱をあけるドキドキ感は、少し冒険感があって楽しかった。

無料で温泉に入れるなんて、理想の街!

美しい自然との距離感が程よい

四万ダムのコバルトブルーはもちろん、街を流れる四万川の透き通った美しさに、足を止め、ため息と共に「きれいだ〜」と旅の間に何度吐いたことか。季節柄、枯れ葉の茶色との景色だったが、春にかけて青々としていく樹木や秋の紅葉シーズンであれば、その景色をもっともっと楽しめるはずだ。だって冬の今だって十分すぎるほどなんだもの。

夜は、星がたくさん見える。当たり前だが、やっぱりじんわり感動がこみ上げる。見上げると球体を感じる夜空が自分の真上にあり、チラチラと、キラキラと、星がある。
街頭がないところを散策するのは、都心住まいからするとちょっと怖いし、雪深い地域の夜は当然寒いのだけど、そんなのすぐ消えてしまうほど。
お部屋を出ればすぐ、美しい湖や川、夜空にアクセスできる。これが最高だった。

お食事が程よいではなく、めちゃ美味しい

今回は、宿泊宿と姉妹館の「つるや旅館」で、夕食をいただくプランにした。これが、もう大正解!上州牛ときのこのお鍋、上州鶏の蒸し鶏、お刺身、お野菜に手打ちのそばなど、心づくしの料理が上げ膳据え膳で出てくる贅沢さ。テンションが上りすぎて、写真を撮り忘れるほどだった。中でも「花ゆかり米」というご当地のお米が、ふっくら甘くてお気に入りだった。宿の方に「良かったら鍋と一緒にご飯を食べますか?」と言われて初めてその存在を知るほど、メニュー表にも書いていなかったのだが、これが大ヒット。普段は玄米派で、白米にそこまでこだわることはないが、これは家に帰ってからネットで購入しようと思った。

温泉のまろやかさが程よい

温泉というと硫黄臭い印象があるけれど、四万温泉は普通のお湯?と思うほど、クセがない。もしかしたら日常との変化差がなく、すっと受け入れられる気がする要因だったのかもしれない。
肌当たりがとてもまろやかで、柔らかいのだ。硫酸塩泉という希少な泉質らしく美肌効果があるとのことだったので、滞在時間24時間で、6回入浴した。

今回宿泊したお部屋はこじんまりとしていたが、かけ流しの露天風呂が付いていた。これもめちゃくちゃ良かった。部屋移動が必要ないので、体が冷えたら、入る。起床したら、入る。朝食を食べたら、入る。風呂好きとしては、文句ひとつ出ない最高の環境だ。
もちろん大浴場も好きなのだが、タオル、着替え、クレンジング、メガネ…を持ち、部屋鍵を携えて、相方と待ち合わせ時間を決めるなど、少し気合いがいる。いつもは、疲れているけど、「せっかくの旅なんだし」という魔法の合言葉で、どうにか重い腰を上げられるけれど、内風呂はそういうストレスを解放してくれた。露天風呂付きということも、オトナ旅に必要な条件だったかもしれない。

かけがえのない出会い

街の規模、自然との距離感、非日常感と日常感など、あらゆる「程よい」を満たすオトナ旅にピッタリの場所。それが群馬の四万温泉であるという発見ができた。このことはこの先何十年と生きる自分にとっては、非常に歴史的な意味を持つ気がする。

夏はカヌー体験、秋には紅葉狩りと、冬の今とは違う表情を見たくなった。
また来たい。また来よう。そう誓って、焼きまんじゅうを片手に高速バスに乗り込んだのであった。

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