無職6週目は、鑑賞ウィーク。映画と美術館へ。

発見 たのしむ

文化的な生活をしたくて

ここ2週間は無職らしく、好きなだけ二度寝をして、ゆっくり起きている。せかせか決まった時間に化粧をして着替えることもない。食べた後の食器も、いつもより少し長くシンクにある。
誰に咎められることもないちいさな喜びの瞬間である。
さらにその上を行くのは、朝ぼーっと眠い頭を起こしながら、無造作にスマホの画面に指をすべらせ「今日は何をしよう。どこへ行こう」と考える瞬間だ。
なんとなく、ダラっとする事に背徳感を抱いたので、「少々文化的な活動」というのをテーマに掲げ、SNSのタイムラインでふと目にし、心に留まっていたものたちを見に行くことにした。
そして、このブログでは感想を書き留めていく。

「ケイコ目を澄ませて」

耳が聞こえない元プロボクサー・小笠原恵子さんの自伝を原案にした映画。

ケイコの耳が聞こえないのとは逆に、ジム内に響く縄跳びやミット打ちのリズミカルな音で映画が始まるのが印象的だった。
コンビネーションの練習も、ついつい体がつられて動きそうなほど軽快なテンポだった。あれは、ケイコがボクシングを楽しんでいる心の様子だったのかも。

岸井ゆきのは、言葉を発することなく、表情と手話で主人公のケイコを演じていくのだが、置いていかれる感覚や違和感は一切なく、すっと引き込まれていった。色んな所で絶賛されていることだし、わたしみたいな素人がああだこうだ言う必要はない。

結末としては、悲劇的でも、明日に超希望を抱けるようなものではない。温かい人たちがいて、それをきちんと受け取れる主人公のひたむきさや美しさを感じた。

この話を通じて、ハッとしたことは「障害がない」多数の人たちに向けて、社会ができていることだ。ケイコは耳が聞こえないが、そのことは傍から見たら全くわからない。それは、夜に1人でいることろを警官に呼び止められるシーンだった。話が噛み合わないケイコに対して訝しげにしている警官2人に、即座に身分証明書を提示し身振り手振りで耳が聞こえないことを伝える。が、ケイコを理解しようとせず、逆に「構わないほうがいい」という態度でそのまま去っていってしまった。手話が通じなければ、伝える手立てがないこと(ヘルプマークなど)や、警官が自分たちが考える当たり前が通じなければ、歩み寄る事なく放っておくことに非常に驚いてしまった。もし同じ場面に遭遇したら、きっとパニックになりそうだ。

ボクシングのルールも同じくある一方側の条件で構成されている。例えば試合中は、レフェリーからの指示やゴングなどはすべて耳から得る情報であること。セコンドも声を出す以外できることはなくて…とトレーナーたちが言っていたのが、今更ながらの気付きであった。

映画『ケイコ 目を澄ませて』公式サイト
2022年12月16日、テアトル新宿 ほか全国ロードショー|出演:岸井ゆきの 三浦誠己 松浦慎一郎 佐藤緋美 中原ナナ 足立智充 清水優 丈太郎 安光隆太郎 渡辺真起子 中村優子 中島ひろ子 仙道敦子 / 三浦友和 監督:三宅唱 原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版) 脚本:三宅唱 酒井雅秋

「エゴイスト」

「ケイコ目を澄ませて」の劇場にあったチラシ置き場で目にしたが、男性同士の愛をテーマにした映画…ということで、BLだと勝手に想像してその場ではスルーした。
しかし、ちょうどその週末に映画公開でプロモーションがおこなわれているタイミングだったので、当日の夜からよくSNSで見かけた。
あらすじを読んだり、2人のインタビューをYou Tubeで見て、観に行ってみようと思った。

結論。誰と誰が愛し合うとかが問題ではなく、ただ美しくて優しい内容だった。
確かにちょっとドキッとしてしまう描写はある。でも、粘着的な感じがなく、いやらしくも恥ずかしくもない。汗でいうと、ベタベタではなく、サラッとしているほう。(どんなたとえ笑)

この記事を読んで知ったのだが、

LGBTQ +インクルーシブ・ディレクターのミヤタ廉が今作に参加している。彼は、ゲイのセリフやムードや習性、所作などあらゆる角度で“いかに違和感がないか”という観点で作品を監修。

とのこと。だから全体的に爽やかで、スッと受け入れることができたのかと思った。

気になっている人といい感じになった後、1人になった時、ウキウキで歌い出す姿や、実家へ友達として遊びに行っているのに、2人しかいないところでイチャイチャしたり。
誰もがくすぐったく表情がゆるむような可愛くて愛おしい人間の姿もあった。

全体的に、役者の肩越しに一緒に景色を覗いているような映像だった。

第一印象だけで、敬遠せずに観に行って良かったと思う。

映画『エゴイスト』オフィシャルサイト
愛は身勝手 /鈴木亮平 宮沢氷魚 原作:高山真「エゴイスト」(小学館刊) 監督・脚本:松永大司 脚本:狗飼恭子 音楽:世武裕子

ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台

これは、東京都現代美術館でやっている展覧会。
ウェンデリン・ファン・オルデンボルフは、オランダ人の映像作家で、シナリオありきでストーリーをつくるのとは違う手法で撮影をおこなうとのこと。
フェミニズム、ジェンダー、レイシズム、オランダ、インドネシアあたりのキーワードが気になって行くことにした。

実は初めての現代美術館。大盛況のディオール展を横目に、前売りのチケットを提示して入館した。
約30分の映像が6本見れるようになっていて、一日で見ようと思うと結構心身ともにエネルギーが必要になる。やはり、事前のふれこみ通り、遅めの朝ごはんをきっちり摂取して良かったと思う見応えだった。

ヨーロッパと南アメリカやアジアはかつて植民地として支配被支配された過去があり、差別的な認識が今でも受け継がれていることを知ったり。家父長制の中で、これが普通だと教えられ暮らして来た女性が、無意識に自分を蔑んでしまうことを知ったり。
フェミニズムが声高に言われる背景もよく理解できていないと気が付き、自分は差別的ではなくフラットであると思っていたけど、まず「知らない」ということが一種の差別であり、なんというか古いなと思った。

柔らかな舞台を見終わったあとは、「二階のサンドイッチ」で軽食を取り、ミュージアムショップに立ち寄る。おみやげに『フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学』というタイトルの本を買った。
そして同じチケットで入れた「MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd」をグルっとした。現代アートはよくわからないけど、見ていて自分なりに解釈するのも面白いし、作品によっては学芸員の方のコメントがあるので、それを読みながら楽しんだ。

美術館を出て、休憩できる珈琲屋を探した。清澄白河はサードウェーブコーヒーのブルーボトルコーヒーが日本初上陸した土地であり、コーヒーが熱い界隈だ。
わたしは、「The Cream of the Crop Coffee 清澄白河ファクトリー」によって、中浅煎りの豆を選び、ハンドドリップで丁寧に淹れられたコーヒーをゆっくり啜って帰った。

鉄は熱いうちに。関心があるうちに。持ち帰った本をしっかり読んで、学んでおこうと思った。

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